伝説の仕込みから半世紀
鮮烈な辛味が時代を越えて味わい深く
1974年8月、有紀食品(現ユウキ食品)の誕生は、豆板醤にありました。
今や中華料理の必需品となった豆板醤ですが、当時はまだ一般的ではなく、中華料理の職人たちの間だけで使われていた調味料でした。
豆板醤と聞けば、多くの人が唐辛子の辛味噌を連想するでしょう。
しかし、本来の豆板醤はそら豆を発酵させた味噌で赤くも辛くもありません。
それに唐辛子を加えたのが、「豆板辣醤(トウバンラージャン)」、
これが私たちが豆板醤と呼んでいるものです。
時は1970年代、日本においてはまだ豆板醤は手に入りにくく、
中国から料理人たちがハンドキャリーで持ち込んでいました。
その豆板醤は長期間熟成され、見た目も我々がよく知る赤ではなく、
焦げ茶色だったのです。
日本の料理文化では見た目も重要であるため、豆板醤のその色合いが料理人たちにとっても悩みの種でした。
有紀食品の創業者、田中晃は、料理人からそのような相談を受けた時、日本向けの鮮やかな赤い豆板醤を作ることを決意しました。
様々な唐辛子を用い、辛みや甘み、うま味やコク、そして色彩のバランスを研究し、料理人たちも納得する鮮やかな赤色の豆板醤が完成しました。
余談になりますが、この鮮やかな赤色がユウキ食品のコーポレートカラーになっています。
その後、中華料理人たちが出演したテレビ番組が話題となり、豆板醤をはじめ中華料理が家庭で身近なメニューとして受け入れられるようになり、豆板醤も一般的な調味料となりました。
この豆板醤は1974年、会社設立の節目に仕込まれたもので、以来、忘れ去られたかのように埋もれていました。
この度、倉庫の隅でひっそりとその時を待ち続けていた豆板醤が偶然発見されたのです。
驚くべきことに、この長期間にわたり熟成された豆板醤は、
今もなおその鮮やかな赤い色彩を保ち続けています。
さらに、その味わいは、辛みと深みと複雑さが絶妙に融合した、
言葉に尽くし難いほどの豊かな風味を持っており、
一度味わえばその魔法にかかること間違いなしです。